クリストのスケッチの特徴は、空間を的確に捉えるパーステクティブの魅力だと私は思う。
クリストとジャンヌ クローゼのユニットはまずクリストが描くスケッチからプロジェクトをスタートさせたと言われている。そこで要求されるスケッチとは、そのプロジェクトの意図が明確に伝えるものでなくてはいけない。スケッチを見ただけで、どのような空間が生まれるのか、言葉を超えて視覚で訴えなければならない。
クリストのスケッチは、そのような要求に完璧に応えたスケッチと言える。
初期の身近なものを梱包したスケッチに既に、その傾向が現れている。
クリストのスケッチに、特有の垂直、水平線、奥行きを感じさせる斜めの線が画面を支配している。
これらの線は下書きという意識ではなく、これらの線はクリストのスケッチを成立させる重要な要素であると考えて良いと思う。これらの線によって、「空間」の捉え方が鮮明になるからである。
彫像を布で覆うという、本格的にプロジェクトに関わる頃のスケッチである。
空間の認識と主体の陰影の表現が的確である。
そして、大掛かりなプロジェクトを手掛けるようになるが、クリストのスケッチは本質的に変わらない。ただ、規模がかなり大きいので、スケール感を出すためにクリストは様々なことを試している。
例えば、地図をコラージュすることや写真の上からスケッチを試みたりしている。
こう言った表現は、現代美術の表現から影響を受けていると思う。
クリストのスケッチは、プロジェクトを作る上で、不可欠と言える。その的確な表現によって、自分たちがやろうとしていることがダイレクトに伝わり、人々を動かすのである。
私は、クリストのスケッチにプロジェクトの本質があると思っている。それ故に、スケッチと実際のプロジェクトの再現性は恐ろしいくらい精度が高い。それはプロジェクトを迷いなく遂行する助けとなっている。まるで、太古に船乗り達が、航海において目的地にたどり着くための羅針盤かのようである。
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