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セザンヌ絵画における中心の喪失

〜セザンヌについて〜

セザンヌ(1839〜1906年)は、後期印象派に属されますが、彼は印象派の作家の中で、サロンという伝統的な展覧会に出品し続けた作家です。セザンヌの描いたものは、人物、静物、風景です。セザンヌの絵画の特徴は、輪郭線と色面によって画面が構成されます。初期の頃の作品は、ロマン主義的な主題を取り上げ、暗い色調で絵の具を厚く盛り上げています。

歳を追うごとに、色彩は多彩になり、絵の具は薄くなっていきます。輪郭線も晩年は目立たないようになります。

セザンヌが33歳で描いた「首吊りの家」(1872年)という作品があります。この作品は、油絵具をしっかりと載せて描いており、建物の質感など重厚な印象を与えます。セザンヌの作品は年を追うごとに、絵の具の量は減っていきます。

57歳で描いた「アヌシー湖」(1896年)を見ると、風景は色面化され、形態は単純化されています。このことは、セザンヌが作品を制作する上で、質感に対する興味が薄れていき、形態と色彩に、そして最晩年の作品「サントビクトリア山」(1904年)は、色彩に対する関心が強くなっています。

セザンヌの言葉に「デッサンと色彩とは区別することはできぬもので、彩色をほどこすにつれてデッサンがなり、色彩が調和していくにつれてデッサンは正確になる。色彩が豊富になる時、形も充実する」とあるように、色彩による階調によって強固な画面を構成できる(ヴァルールの充実)と考えていました。

作風の変化は見られますが、一貫して言えることがあります。セザンヌは、「自然を円筒形と球形と円錐形によって扱いなさい」という言葉を残しています。これは、自然の中にある事物は、すべて単純な形態に還元されることを示唆しています。またこのことは、描く対象を全て等価に扱うことにもつながります。(中心の喪失)

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